『リネージュW』が4つ目の新規クラスであり、2つ目のシグネチャー クラスである「魔撃士」と新ダンジョン「氷の水晶洞窟」を公開しました。氷の水晶洞窟は遥か昔に氷の女王を閉じ込めた空間で冷気に包まれています。氷の水晶洞窟が誕生した原因となった「氷の女王」そして、それに対抗するために象牙の塔で禁忌とされた研究で誕生した強化人間「魔撃士」の物語をご紹介します。
遥か昔のエルモアデン帝国時代、火竜ヴァラカスの暴走が止まらず多く者がヴァラカスを討伐するために立ち上がった。しかし、ヴァラカスに対抗するのは容易ではなく多くの者が命を落とした。この時、オーレンの領主ダゴンも命を失ったという。オーレンの象牙の塔で魔法を学んでいたダゴンの娘イロニスはその知らせを聞いてヴァラカスに対する怒りに包まれた。父の葬式が終わると同時にイロニスはヴァラカスを討伐するために旅立った。象牙の塔でも優秀な能力を持つ魔術師として認められていた為、誰もが彼女がヴァラカスを討伐するのに大きな力になると信じていた。しかし、イロニスはヴァラカスを見た瞬間に判断力を失い、自身の冷気魔法を使いすぎてしまい、その結果自分の体はもちろん、オーレン地域まで雪と氷で覆われたという。それ以来、イロニスはダゴンの娘、象牙の塔の魔術師ではなく、氷の女王と呼ばれるようになった。
象牙の塔の魔術師たちは事態が悪化する前に氷の女王を洞窟に閉じ込めた。しかし、残酷な程に強い冷気が漏れてくるのをすべて止めることは出来なかった。それ以来、象牙の塔の魔術師たちは氷の女王を永遠に封印する方法を研究した。
長い時が流れ、デポロジューの時代。象牙の塔の一員であり恋人でもあるブラッドとスビンは氷の水晶洞窟に派遣され、そこで研究を続けていた。氷の女王の封印が解かれるとアデン全域が被害を受けるため、彼らは氷の女王を無傷で消滅させる方法を模索していた。そんなある日、スビンは氷の女王も人間であるため、彼女の凍りついた心臓に変わる温かい魔力心臓をプレゼントし、イロニスだった過去を思い出させてあげようとした。
「ブラッド、彼女に温かい心臓があれば今ほど苦しむことはないと思うんだけど…どう思う?」
スビンとブラッドは研究を重ねた結果、魔力心臓を作り出し、それを氷の女王に渡した。象牙の塔の魔術師たちは妖精の涙とスビンの魔力を加工して温かい心臓を作り氷の女王に渡した。すると変化が起きた。冷気が減り、氷の女王は洞窟の近くで滞在して研究を続けるスビンとブラッドに興味を持ち始めた。減ったとはいえ、それでも人間を傷付けてしまう冷気を持つ氷の女王は遠くで二人を見守った。
その姿を見たブラッドは氷の女王に渡すプレゼントを準備した。これまで洞窟で集めた材料で作ったイアリングだった。彼はいつになるかわからないが、氷の女王と対面するその日の為にプレゼントするイアリングをずっと持ち歩いていた。しかし、ある日、洞窟で足を滑らせてしまい、ペアのイアリング失くしてしまった。
ブラッドを遠くから見守っていた氷の女王は彼が落としたイアリングを拾った。それを触りながら氷の女王は自分の心臓が熱くなるのを感じた。それは過去の復讐や躊躇の感情ではなく、新しい感情だった。数日後、氷の女王は侍女たちに火炎の気まで使わせて自分の冷気を減らし、ブラッドを探して訪ねた。しかしその日、氷の女王はブラッドがスビンにプロポーズする姿を目撃してしまった。氷の女王は未知の感情を抑えきれず、爆発的な冷気を吐き出した。彼女を止めようとしたスビンもまた彼女の冷気に閉じ込められてしまった。洞窟は再び過酷な冷気で満たされ魔力心臓も凍りついた。
氷の水晶洞窟の近くまで冷気が広がり、事態の深刻さを感じたブラッドはスビンを探して急いでその場を離れようとしたが、スビンの行方はわからなかった。彼は氷の水晶洞窟を出入りする勇者に会うたびにスビンを見つけてほしいと頼んでいた。ある日、とある勇者がスビンの痕跡と思われる物をブラッドに渡した。涙の模様で凍りついた一片の氷だった。
「ブラッド、どうやらスビンの涙が物凄い冷気によって凍ったようだ。」
ブラッドは氷をじっと見つめて、失望した表情で言った。
「ふむ…この涙はスビンの物ではなさそうです。これは…氷の女王の涙ですね。」
一方スビンは氷の女王の結界の中で徐々に凍りついていった。完全に凍りつく直前にスビンは力を振り絞って氷の女王に言った。
「あなたは決して悪い人じゃないわ。優しい人間になれるのよ…」
その言葉を聞いた氷の女王の目には、再び得体の知れない感情から来る涙が浮かんだ。
スビンにはマービンという異性の弟がいる。象牙の塔で魔法を研究するマービンは温厚なスビンと違って少し気難しい性格だった。小柄な為、いつも騎士へのロマンに満ち、身体を強化する禁じられた魔法を一筋に研究していた。マービンは小動物をこっそりと連れて来ては魔力を注入して強化しようとしたが何度も失敗していた。そんな中、ブラッドからスビンが消えたという知らせを聞いて、姉への心配からろくに準備もせずに洞窟に入って以降、消息が途絶えた。
氷の女王に対抗するために様々な方法で研究していた魔術師たちは、マービンが残した研究書を発見した。そして、すぐに彼のやり方が間違っていることに気づいた。そもそも小動物は魔力に耐えられない。その為、魔術師たちは強い存在に魔力を注入して見ることにした。彼らは闘技場に出入りする格闘士たちに強くすると誘い、実験に利用した。彼らは格闘士たちの体に強い魔力を注入したが、それに耐えられなかった者は魔力が暴走し全身が破裂して死んだ。秘密裏に続けられた実験により死んでいった格闘士が数百人に達した。そして、ついに身体強化に成功した者が現れた。元々他の者より身体能力に優れていて、厳しい寒さにも鍛錬された彼は優れた格闘術に魔力まで加わり、様々な格闘能力を発揮した。魔術師たちは喜びその技術を「魔撃術」と命名した。しかし、拷問のような実験で自我を失っていた彼は魔術師たちの命令で動く兵器に成り下がった。
魔撃術で強化された人間はやがて、氷の女王討伐に先立った。冷気がさらに強まり、身を切るような吹雪を潜り抜け、氷の女王の元に辿り着いた。氷の女王が攻撃すると多くの冒険者が倒され、次に各領地の騎士たちが倒され、最後には象牙の塔の魔術師たちと強化人間のみが残った。しかし、氷の女王が一撃で強化人間の腕を引き抜くと、残った象牙の塔の魔術師たちでは対抗できなかった。彼らは生き残るためにすべての魔力を強化人間に注ぎ込み始めた。強化人間が耐えられないほどの強い魔力が入ると暴走すると予想し、その間に逃げる算段だった。
しかし、魔術師たちの魔力が集まった強化人間は暴走しなかった。切断された腕の代わりに魔力を養分として新たな腕が生まれた。今すぐに暴走してもおかしくないが、元々理性を失った強化人間は狂気に近い程、精神が崩壊してしまった。魔力の暴走を待っていた象牙の塔の魔術師たちは、結局逃げることができず全滅した。氷の女王の力はますます強まり、最後に残った強化人間を覆い尽くした。強化人間は一人で氷の女王の攻撃に立ち向かったが、次第に凍りついていった。
そうして、強化人間が属した討伐隊も他の数多くの討伐隊のように消え、人々からも忘れ去られた。
150年後、火竜の棲処でヴァラカスが目覚め、その余波で堅固だった氷の女王の氷が溶け始めた。その時、本来ならオーレンの氷の洞窟の中で死んだはずの強化人間が目覚めた。象牙の塔に連行され、拷問のような実験を受け、理性を失ったまま討伐に動員された記憶も鮮明に蘇った。正気を取り戻した強化人間は、象牙の塔に対する怒りが沸き起こった。そのすべてが夢ではないことを彼の腕が証明していた。魔力が宿った腕、それが彼の当時感じた苦痛を鮮明にした。
彼はようやく自由を取り戻した。痛みに慣れた彼はあらゆるものに耐えられるようになった。しかし、自分を失うことは二度と耐えられない。生き続けるために、象牙の塔の魔術師たちに復讐するために、立ち上がらなければならない。
※ 『リネージュW』魔撃士についての詳しい物語はゲームの魔撃士クエストから確認しましょう。