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    2021.02.08 Press Release

    NC ART PROJECT#2、現実と仮想、人間と技術をメディアアートで織り交ぜるメディアアーティスト ヤン・ミナ

    Creator Crew:
    NCのコンテンツと自分のクリエイティブをつなげて楽しさを増やしていく人々

    ゲームにおける文化的環境を深く考察し、そこからクリエイティブを見つける実験的なアートプラットフォーム「NC ART PROJECT」。一番目のプロジェクト『次元の混合(Mixed Dimension)』で多次元世界の創造と共存を詩的なナラティブで表現したメディアアーティストのヤン・ミナ氏にお話を伺いました。


    技術の芸術的価値を信じる

    技術が進歩するにつれてメディアアートの境界は拡大していきますが、現在の「メディアアート」をどう定義しますか?また、作業内容も紹介してください。

    メディアアートは写真、ビデオ、コンピュータ、そしてフィジカル・コンピューティングまで様々なメディアに芸術を取り入れたジャンルです。その中でも自分はコンピュテーショナル・メディア、またはジェネレーティブ・メディア関連作業を行っています。コンピュータ計算を利用して視覚的イメージを表現するソフトウェアや映像を制作し、それを組み込んだ造形物を作ります。それと大学教授を務めています。

    メディアアートは仮想と現実を分離しません。

    視覚的に表現した対象が造形物として存在するならば普通の観客はそれが仮想のものなのが現実のものなのかなどは考えません。そういうところがとても魅力的で楽しいです。そして、表現に限界がほとんどないことにも魅了されました。

    AIで代表される最新の技術環境は芸術にも大きな影響を及ぼしています。興味深い展示のテーマにもなりますし、アーティストの作品世界を豊かに表現するための道具にもなります。ヤンさんも進化する技術環境を誰よりも早く作品に取り入れていますが、技術はどういう意味を持ちますか?

    技術に芸術的価値があることに気づいたのは大学に入ってからです。技術そのものが芸術の主体になれると思ったわけではありませんが、技術が造形を作る道具になれると思いました。それで、工芸作品を作ってドローイングするようにコードを組んでコンパイルしました。

    学部ではデザインを勉強しましたが、独学でコーディングを覚えて今使える言語は10個ほどです。工学部で学ぶカリキュラムのほとんどを一人で勉強しました。良い筆を手に入れたような気分で、当時の感動は今でも鮮明に覚えています。

    大学では何を教えていますか?

    クリエイティブコーディングという、いわゆる創造的プログラミングを教えています。実は学期ごとに教える内容が変わります。その時その時に教えたいものや学生の要望に応じて対応しているからです。コーディングはプログラマーの領域だと思っている人が多いですが、約15年前からデザイナーやアーティストがコードを組んで画像を作ったり、造形物の制作を実験するグループが増えています。その中で有名なグループがMITメディア・ラボです。Googleにもラボがありますね。

    昨年はUnityとProcessingを教えましたが、今年もUnityを教える予定です。Unityはゲームを作るツールですが、展示物や作品制作に最適化されているかのように非常に使いやすいです。

    1億8千万個のデータが作るアート

    今回の作品『次元の混合(Mixed Dimension)』はゲームの世界観をモチーフにしましたが、世界観に注目した理由はありますか?

    世界観というよりはゲームの進歩とプレイヤーの行動、開発文化などに着目したと言ったほうがいいかもしれないですね。「NC The World」はNCの歴史、「The Origin」は開発者の文化と歴史、「Evolution」はゲームとプレイヤーの相補的関係、「Coexistence」は仮想と現実の出会いを表しています。文化的関係、歴史、ゲームの役割などかなり具体的にゲームまわりのあらゆるものをモチーフにしました。

    『次元の混合(Mixed Dimension)』の制作前から共進化*を重要な概念として捉えて作業されたと思いますが、今回の作品にも共進化を重要概念にした理由はありますか?

    共進化は非常に多くのアーティストたちが興味を持つ概念です。特に技術と道具が人間の進化に与えた影響について認識していれば興味を持たざるを得ないと思います。ゲームのスタイルや仕組みなどは有機的に変化します。プレイヤーの行動によってゲームが進化し、進化したゲームに応じてプレイヤーが進化する。つまり、相補的にゲームは進化し続けていると思いました。

    *共進化:人間と道具(機械)が影響し合って相互進化を遂げるという科学哲学の概念

    「The Origin」の「マンデルバルブ」や「メンガーのスポンジ」はあまり聞いたことがない概念ですが。

    ゲーム開発の歴史を見るとデモシーン(Demoscene)という独特な文化があることが分かります。非常に小さい実行ファイルサイズのゲームエンジンを作って視覚効果を考案する開発者たちの文化です。数十年前からデモシーン開発者たちの活動は続いています。最近は「Shadertoy」などのサイトにwebGLを使ってリアルタイムpath tracingやray marchingを作る活動をしています。このような文化がなかったらグラフィックスエンジンのリアルタイム表現や3Dアニメーション特殊効果の技術進歩はかなり遅れたでしょう。デモシーン開発者たちがスキルを自慢する際に「マンデルバルブ」や「メンガーのスポンジ」のようなフラクタルモデルをよく使いますので自然に当プロジェクトにも取り入れました。

    作品の制作方法が気になりますが、どういう技術や手法を使いましたか?

    本作品には2019年のNCユーザーリンクトビッグデータを活用した作品や流体力学を用いたリアルタイム映像などがあります。また、先ほどもお話したフラクタル動画とモーションキャプチャを使った作品もあります。

    「NC The World」についてもう少し詳しく説明すると2019年に36個のゲームサーバーでプレイしたユーザーのリンクトデータとNCゲームユーザーの成長指標を作品に盛り込みました。作業に利用したデータだけで約1億8千万個です。しかもこれはすべてのデータではありません。実際のデータ量はその10倍くらいになります。大量だったのでかなり苦労しました。データ処理だけでPCが重くなったり、簡単な修正作業でも全データを動かして相当な時間がかかったりしました。「動きがちょっと微妙かも…」と思ったら削除してコードを書き直してまた撮る作業を何千回も繰り返しました。各フレームはデータ値の影響で変形されてしまうため、プログラムはC++とGLSLだけで組みました。

    作品は4つのパートに構成されていて、各パートは最初に会社のロビーが出て最後にまたロビーに戻りますが、これは何を意味しますか?

    現実から仮想へ、そして再び現実に戻るシーケンスです。ゲームの「仮想と現実の曖昧な境界」の表現に最も適した手法だと思いました。

    観者に伝えたいメッセージはありますか?

    作品を制作する時にアーティストと開発者、デザイナー、そして企画者の目指すゴールがずれることは多々あります。それは職種の問題ではなく、人それぞれの好みや思考が違うからでしょう。重要なのは自分と違う視点や思考を認めることです。映像を見て「ゲーム文化をこんな風に表現することもできるんだ。」と気軽に楽しんでいただければと思います。

    新しい世界に対する好奇心がメディアアートの派生を生み出す

    最近注目していることは?

    NCとのインタビューだからではなくて、最近ゲームにすごく興味があります。ゲーマーの行動様式やゲームの形式、ゲームの仕組みなどについて少しずつ勉強しています。最近のグラフィックスエンジンがかなり進歩していることも興味を持った理由の一つです。以前は限られた表現しかできなかったのが、今はリアルタイムで、しかも非常に早いスピードで実現されています。進歩する表現手法によって新たな派生が生まれるのではないでしょうか。

    本作品の制作時にゲームの中のたくさんのデータを見てゲームについて深く考察してみました。こんなにたくさんのプレイヤーたちが存在し、繋がっているとは思いませんでした。予想はしていましたが、データで見るとまったく違う感じですね。ゲームの仕組みなどについてもっと勉強したくなりました。

    趣味、またはインスピレーションを受ける分野はありますか?

    キネティックアートが好きです。趣味でもありますが、スケッチして回路設計したり、仕組みをシミュレーションして試作を作ったりするのが面白いです。自分があまり知らない分野を勉強しているので関心が高まって楽しいです。

    それ以外の普通の趣味は最近ちょこちょこドローイングを描いています。もう少し余裕ができたら一日に一時間は描きたいですね。本とか散歩中にインスピレーションを受けることもありますが、やはりスケッチはインスピレーションにとても重要です。一人の時間を作ってスケッチしながらアイディアを具体化します。

    次の目標、もしくはまだ叶っていない夢は?

    作品を作って展示するのが好きですね。それを夢と言えるのかは分からないですが、とにかく好きです。不得意でも興味が湧いて幸せを感じることを追い続けていたら多様な経験を積むことができて今の自分がいると思います。子供の頃の夢はILM(Industrial Light & Magic)で特殊効果の専門家として働くことと漫画家になることでした。これはもう叶わないと思いますが、これからも幸せの道を選んでいきたいと思います。

    一番楽しいことは?

    ドローイング、コーヒー、クッキー、映画、バイク、木工、はんだ付け、たまにクリエイティブコーディング。本当に楽しいです。

    * 本インタビューで言及される内容はインタビュー当事者の個人的見解であり、NCSOFTの公式立場ではないことを明らかにします。